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技術のプロフェッショナルである我々のディレクションは、工程管理なのではなく「オーダーの意図を組んだ具現化」に対する責任を負う行為だと言えます。しかし、毎回毎回こうしたディレクションを行うわけではありません。逆に、すでに手がけたもののリピート品の場合、我々のミッションは品質を変えずに納品できるかということになりますから、これらは工程管理、品質検査を徹底していくことが重要です。むろん、工程管理も広義における”ディレクション”であると言えますが、あえてここではディレクションという言葉とは分けて、「品質管理」という方が良いように思います。
新規案件であれば必ずディレクションは丁寧に行います。どの案件にも言えますが、初めての案件は、たとえそれが我々の技術的に類似の事例があったとしても、未知の案件に違いはないのです。関わる人が異なれば、品物に対する考え方も異なります。したがって、意図をしっかりと汲み取り、それを具現化するために必要な”頭の使い方”と工程管理の方法が異なると考えています。
思ったものを金属で具現化するというのは、とにかく簡単ではありません。さまざまな知見をベースにいくつかの方法をディレクションして、それらをすべて試作しながら形状化していきます。とはいえ、近しいものは生まれるのですが、意図をドンピシャ具現化したようなものに出会うことはなかなかありません。
地道なことの繰り返しでしかないのですが、現場の技術者とデザインの意図を繋ぎ止めながら磨き上げていく作業には独自の知見が必要です。同時に、技術の現場にいるからこそできることが多々あります。たとえば、金型は冬場と夏場で金属の温度が変わるため、扱い一つで仕上がりが変わってきます。金属そのものは温度での影響を強く受けるのでごく当たり前の知識ですが、これらを現場にいない人間が理解することは難しい。一方で、現場の知識だけでデザインをしようとすれば、さまざまな制約を前提に考えるようになりユニークなアイデアが生まれない。どちらも必要であり、どちらにも理解の深いディレクションがあるか否かは大きなことであると考えています。